不妊症について

不妊症とは、
WHO(世界保健機構)の定義によると「1年間に渡り避妊せずに性生活を試みても妊娠に至らない
状態」となっています。

 近年、結婚年齢が高くなった日本でも1年以上妊娠しない場合(年齢によっては半年間)に不妊症と診断し、年齢が高い場合にはより早期に検査と不妊治療を開始したほうがよいという考えが一般化してきています。

東洋医学における不妊症

東洋医学には‘月事以時下、故有子’という言葉があります。
これは、「生理周期が整えば、性腺・卵巣・子宮などの生理活動が正常となり子供を授かる事が出来る」という意味です。不妊治療において、生理周期の乱れを調整する事が、いかに大切かを説いています。

生理周期を乱す原因は、ストレス、自律神経の失調、ホルモンバランスの異常、冷えや血液循環の不良などさまざまです。 生理周期の正常化を図り、体内環境をしっかりと整える事ことで妊娠しやすい体をつくること。卵子や受精卵の質の向上を図っていくことが大切です。

不妊症の漢方薬

不妊に効果があるとされる漢方薬は、男性女性ともに症状の改善が見られたというデータもあり、ホルモン剤等の西洋薬と併用することで、お互いの作用を高める使い方もできます。

女性不妊に効果的な漢方薬(代表例)

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)=妊娠前から妊娠中まで幅広く使える

色白で体質的に虚弱傾向(虚証)、手足や腰に冷えがあり(寒症)、貧血傾向や月経が遅れがち(血虚)、生理痛が強く(血瘀)、むくみがち(水毒)な方に適しています。

西洋医学の知見からも、ホルモンバランスの改善効果や排卵誘発効果が報告されています。また、骨盤内の血行改善効果もあるため、妊娠の維持=流産の防止も期待されます。

桂枝茯苓丸 (けいしぶくりょうがん)=血の巡りが悪い方へ

体力がやや虚弱で、肩こり、肌荒れ、下腹部痛(血瘀)、手足は冷えるのに顔がほてる「冷えのぼせ」や急にほてるホットラッシュ(気が巡らず上に登ってしまう「気逆」)などの症状がある方に適しています。

西洋医学における子宮筋腫や子宮内膜症なども血瘀の一種と考えられ、こられの改善も期待されます。

加味逍遙散 (かみしょうようさん)=ストレスからくる精神不安や不眠を伴う方に

色白で体質的に虚弱傾向(虚証)、月経不順、手足は冷えるのに顔がほてる「冷えのぼせ」があり、イライラや不眠・不安・頭痛などの精神症状を伴う方に適しています。ストレスからくる気滞による精神症状は症状が一定しない(いわゆる「不定愁訴」)になりやすい傾向があります。

西洋医学においても、月経前症候群の治療にも効果があることで知られています。エストロゲンやプロゲステロン等のホルモン物質の分泌量を改善する作用があり、子宮内膜の増殖、卵胞の発育が良くなります。

男性不妊に効果的な漢方薬(代表例)

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)

体力低下や疲労などによる造精能力の低下を改善する効果があります。特に疲れやすい人や体力があまりない人に有効で、精巣上体のタンパク合成機能を向上させる作用があります。そのため、運動率の高い精子を増や受精率を高める効果が期待できます。

女性不妊でも、極端な体力不足(気が巡らずに落ち込んでします気陥:きかん)で無月経となってしまうような場合、基礎体力を向上させるため使われます。

八味地黄丸(はちみじおうがん)

男性のなかでも体が冷えやすい人に処方されるもので、造精機能を高める働きがあります。
主に、軽度の乏精子症等の場合に大変効果がみられ、服用することで精子の数が増えて精子濃度が上がるため受精率も高くなります。また、夜間頻尿などの症状改善にも効果があります。

桂枝茯苓丸 (けいしぶくりょうがん)

精索静脈瘤ができやすい体質の人に効果的で、血流の改善効果が高い漢方薬です。
精索静脈瘤が検査で見つかった場合には、桂枝茯苓丸の服用を治療に取り入れると西洋薬を使った治療の効果もあがります。

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